カイオム・バイオサイエンス

さてさて、本日8810円ストップ安比例配分となったカイオムさんについて。
抗体医薬品開発の新手法ADLibの優れたポテンシャルに対して期待の買いが集まり、1000円そこそこの株価が2万円まで急騰した銘柄です。
その後市場全体のバイオ熱が収まるに伴って1万円台前半まで落ち込んでいたところで驚愕の発表があったわけです。昨日のことです。
行使価額修正条項付きの新株予約権による資金調達です。調達額は50億円、行使開始日は3月4日、最低行使価額は5865円、割当先はマイルストーンキャピタルマネジメント。
この発表を受けて今日の株価は大暴落となりました。

大暴落の理由は、急騰に伴って入っていた短期資金が逃げ出しただろうことと、ADLibに対して生じた不信感によるものだろうと思います。会社は3月期末までにADLibのプロトタイプ完成に言及していますが、目先の50億円を欲しがるということは、すぐさま他社にライセンスできる状況にはないと判断できます。
そればかりかそもそも本当にADLibは完成するのか、といった疑念まで生じてしまいました。
また、藤原社長は従来から財務面に配慮した経営を行うと宣言しており、創薬アライアンス事業や抗体導出での売上を研究開発につぎ込むとしてきたわけですが、この方針を撤回したことになります。そもそも創薬アライアンス事業の売上が立つのかについても不透明な状況です。

このような状況から、単なる株式の希薄化懸念というものではなく、経営方針への複数の失望が投げ売りを呼んだと理解しています。

では、カイオムはもうおしまいなのかというと、そうは思っていません。この会社は理化学研究所との強い繋がりがあり、技術面は極めて有望と判断しています。ただ、ADLibの完成が近づいてきたことによって、藤原社長はなにか「惜しく」なったのではないでしょうか。この技術を使えば自前で早期に複数の創薬パイプラインを持てるぞと。そうすれば会社も大きくできるぞと。幸いにして株価も上がっているから、ここでさらに大きな夢をぶち上げれば市場からも好感されるに違いない、、なんて思ったのではないでしょうか。

しかし市場の反応は株券印刷業への業態転換を懸念するものでした。これには藤原社長もかなり驚いたと見えて、本日引け後に株主への弁明めいたメッセージを出しています。ただその内容は株主の期待するものではなく、自前でどんどん開発を進めるからちょっと待っておれという趣旨のものでした。

心配なのは、このままだと3月11日の時点で最低行使価額を割り込んでいる可能性も十分にあることです。そうなると資金調達はできません。抗セマフォリン抗体の導出がされたとしても、次に売る物は何なのでしょう。自前のパイプラインなんて大風呂敷を広げるほどの企業体力はカイオム社には無くなります。

ですので、患者を助けるという使命を果たす観点から最も良い方法は何なのか、藤原社長にはよく考えて頂いて堅実な道に



さて、カイオム社への投資にあたって、どこか間違えたのかを検証しなければいけません。

7000円台から8000円台にかけて買い付けていったのだけど、あまりに順調に上昇したので油断があったと思います。2万円に近づいてきたあたりからヤフー掲示板の1位になるなど、浅はかな個人投資家大集合の不吉なフラグが立っていました。値崩れのリスクが高まっていたはずなので、ここでせめて半分利食っておけばよかったか。でも世間はアベノミクスだし、ADLibも完成間近などとかなり浮かれていて売る気にはなれませんでした。

次に、増資を予測できたか。前期末の現預金が10億円だったものが第3四半期末で7億円。特に切羽詰まっているものではないし、ADLibのライセンスがキャッシュを生むから問題なしと考えていました。ただこれはよく読めばADLibのプロトタイプが今期末ということで、本番の完成はまだ先。ライセンス料は当面は入らないとわかったはず。そうなるとかなり懐事情が悪くなる。抗セマフォリン抗体の導出がされれば数億円の収入になるだろうからそれで食いつなげるはずだけども、それが遅れそうとか、遅れても構わないなんていう発言が社長からされていたことを考えると、増資の可能性は予見できた様にも思う。

うーん、いろいろ反省点の多い投資案件でありました。