大証金の優先株

大証金の財務諸表を見ていて、優先株式を発行していることに気がつきました。この会社は2008年のリーマンショック時に、まさにリーマンブラザーズとの取引で失敗して1株当たり400円超の損失を出しているんですね。そのときにいろいろと金策に走ったことで、野村HD等に対して30億円の優先株を発行しています。
これは社債優先株などと呼ばれていて、普通株への転換ができないものです。転換できないのだから希薄化せず、既存株主には迷惑をかけない資本政策であり、自己資本規制比率を400%という高水準に維持することができるとの説明でした。
しかしながらそんなうまい話はなく、引き替えに高い配当率が設定されています。額面200円に対して14円の配当となっており、配当率は7%です。これは年間で2.1億円にもなり一般株主に帰属する利益が大きく毀損しています。24年3月期の最終利益は309百万円ですが、この3分の2以上が優先株の配当に消えているのです。
この優先株は5年を経過して以降は買い戻せることになっていますが、まだ2回の配当支払いが残っています。4.2億円の将来価値が流出することが確定しているわけです。
4.2億円というと1株当たり11円くらいですので、TOB予想価格も引き下げないといけませんね。従来250±50円くらいと思ってたんで、240±50円くらいにしておきます。
ちなみに一株当たり純資産の405円というのは、この30億円を差し引いた値になってますので過度の心配は無用です。

ところで、私が引っかかっているのはこの優先株の発行が本当に必要だったのかというところです。400%の自己資本規制比率といいますが、別にそんなに高くなくても事業活動に影響はしないはずですから。当時の開示資料によると、これにより純資産が182億円になるとされていましたので、自己資本規制比率の計算上の分母であるリスク額は45.5億円ということになります。では諸経費を除いた調達額29.75億円を182億円から減じて計算してみると、(182-29.75)/45.5=335%となります。十分に高い数字です。これを400%までかさ上げすることに何の意味があるというのでしょう。この見せかけの400%に拘ったがために、一般株主は5年で10.5億円を失ったのです。
もし私が大阪地検特捜部の検事だったら、堀田隆夫社長を特別背任の容疑で強制捜査していたかもしれませんね。