亀井叩き

このところ亀井金融担当相を叩く論調が目立っているけれども、実に不可思議な現象だ。マスメディアや市場関係者や人気ブロガーに至るまで世の中亀井叩きで溢れ返った。

彼らの主張するところによると、いわゆる「モラトリアム発言」を問題視しているようである。確かに亀井大臣は就任会見以降、モラトリアム制度を導入すると発言してきた。どうもマスメディアなどはこれをいわゆる徳政令のようなものと理解し、銀行が貸付金の返済を受けられなくなって大変な事態になるとか融資が激減して経済が破滅するなどと捲し立てた。発言のせいで金融株が値下がりしたなどとまで言われた。

しかしながら、就任会見において亀井氏が問題にしていたのは銀行による貸し剥がし黒字倒産が相次いでいるといった状況についてであった。その対処として返済の猶予を制度化したいという文脈であり、これは緩和的な金融政策を行っていくというメッセージであった。黒字倒産というのは債権区分の引き下げによって引当金を積まされることを銀行が嫌うからこそ起こる現象で、これはまさに金融庁の裁量の問題であるのだから。

そもそも亀井氏は東大で経済学を学んだ秀才であるし、小泉竹中政権時代には不況下の不良債権処理を強烈に批判していた。これはもちろん信用収縮が加速して経済に致命的な被害を及ぼすと考えたからである。実際このとき我が国経済は大幅に落ち込んだし、大手銀行株は10分の1以下にまで叩き売られた。亀井氏がこれと同様に金融機関を攻撃して信用創造機能が棄損されるような政策を目指すことは考えられない。

なぜそう断言できるかというと、亀井氏は政策のぶれの少ない政治家だからである。日和見で自身の政策といえるものを持っていない政治家は多いが、亀井氏がそうでないことは小泉以降の氏の発言や行動を見ていれば理解できよう。ましてや主要政党の中で最もリフレ志向の強い財政拡大路線を主張している国民新党の党首でもある。であるのに、マスメディアをはじめとして亀井発言の上辺だけを取り上げて大騒ぎする様は真に滑稽である。

ここにきて鳩山総理からも債権区分を甘くする方針が伝えられた。これは純粋にお金の量が増える政策であるから、不況下の政策として正解である。これで亀井叩きも収束に向かうのだろうか。