馬鹿から金を奪い取る

株式市場は馬鹿から金を奪い取る場である。

株式というものは資本家を旨く使って産業を興し社会の発展に寄与するという点で優れたシステムであるが、会社がうまくいって上場されると別の要素が生まれてくる。

市場の機能として、株価は会社の業績に応じてあるべき価格に調整されることが期待されている。如何にももっともらしい、そして婉曲的な言い回しであるが、その過程で会社の業績や経済の見通しが良くできたものが利益を得ることになる。その金は見通しを外したものの金である。つまりこれは馬鹿から金を奪い取るシステムだということに他ならない。

よく政治家や大学教授が健全な市場機能がどうのこうのとか綺麗事を言うことがあるが、上場株の取引に社会通念上の健全性、たとえば額に汗して働いて金を稼ぐ美徳等に通じるものは何もない。極めて無感情な、無慈悲な市場の原理があるだけである。

それなのに最近よく耳にするのは「貯蓄から投資へ」というような素人を市場へ誘い出そうという文句である。株屋が自身の利益のためにこのような営業をすることを非難するつもりはないが、代議士たる政治家がこういう台詞を口にするのには全く辟易する。素人が浅知恵で株に手を出しても金を奪われるだけで終わることが目に見えているからである。